追い詰められた時の、とっさの行為に表れるその人の人生観。このごろの企業不祥事では、発覚後の経営者の潔さの欠落が、ことを大きくしているケースばかりが目立ちます。そもそも不祥事などあってはならないのですが、起こってしまった時に醜態をさらさないためにも、経営者は日頃からそれなりの心構えが必要ではないでしょうか。

　世の中には、偽装とか詐欺をしないまでも、法に触れないギリギリの行為をすることが賢い生き方だと思っている人が多いのですが、わたしは絶対にそのように思うことは出来ません。そんな小賢しい生き方をしているとギリギリの境目などかえって分からなくなってしまい、そのうちに大きく向こう側にはみ出しても、お上に見つかりさえしなければいいと思うようになります。

　正義感のない経営者の下では、いくら口先で顧客満足などと叫んでみても、会社の文化もお客様本意とは違うものになってしまいます。経営姿勢の良くない、特に倫理観のない経営者を見ている社員は『上手いことやって人より多く儲けるのが商売だ』と思うようになります。いずれそんな経営者は、社員に裏切られても不思議ではありません。ご存知のように、最近の企業不祥事の多くは内部告発によって発覚しているのです。税務調査も密告により動いたと思われる事例も少なからずあります。

　わたしがお会いした大きな成功を収めた経営者の多くは品格のあるいい人たちです。もちろん、いい人というだけで成功することはありませんが、結果として成功を続ける人に小賢しい人などひとりもいません。一時の経済的な成功は小手先のテクニックで手にすることが出来たとしても、長い間いい状態を保ち続けることの出来る人は、気高い人生観を持ったいい人だとわたしは信じています。

　ただし20〜30歳代の若い人に限っては、多少の周囲との摩擦は恐れずにガツガツやるもいいとは思います。いい人ということが何にも優先されるのではありませんから。むしろ大きなものを得るためには、周囲に変化を与える強い行動力のほうがより必要になります。そして成功する過程で次第に魅力的ないい人になっていけばいいのではないでしょうか。ただし、その過程でいい人にならないと、いずれどこからかしっぺ返しがくることになります。

　わたし自身も、とっさの時にもみっともない振る舞いをしないような魅力的なオヤジになるためにも、日頃から心して生きていかねばと改めて思ってしまいます。