一喜一憂しない人生

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祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。娑羅双樹の花の色、 盛者必衰の理をあらはす。奢れる人も久しからず、ただ春の夜の夢のごとし。猛き者もつひには滅びぬ、ひとへに風の前の塵に同じ。
(平家物語)

「諸行」はすべてのもの、「無常」は常がなく続かないことです。健康も、財産も、地位も、今がどんなに充たされていたとしても、その現実は絶えず変化します。さらに充実するか、崩壊するのかはともかく、今この瞬間も変化し続けています。

 営々と築き上げたどんな成果も、人生の幕切れで虚しく散ってしまいます。先日亡くなられた紀州のドンファンは幸せだったのでしょうか。

 私たちの欲求にはキリがありません。美味しいものが食べたい、素敵な洋服を着たい、カッコいい車が欲しい、恋人がいたら…欲求が満たされたら不満や不安は解消します。その過程で感じる「気持ちよさ」が幸福感です。

 しかしそれも束の間の出来事です。咽が渇いて飲むコーラはスカッと爽やかでも、十分渇きを満たされてから飲むコーラは苦痛です。

 経済的に豊かな人ほど深刻な苦悩にさいなまれていると言ったのはフランスの社会学者デュルケムです。どうやらお金持ちが幸せだとは限らないようです。

 いいことばかりが続かないのが人生です。喜んでも流されず、悲しんでも悩まず、平常心を常とし、目の前の小さな現実に一喜一憂することのない人生でありたいものです。